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【2010年10月22日 名古屋発】
生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10)の第1週、複雑かつ曖昧な交渉がおこなわれる中、野生植物の保護の問題に関する重要な議論が注目された。
21日、世界植物保全戦略(GSPC)が会議の議題にのぼった。願わくば来る総会に向け前向きな先例を示すべく、70ヵ国以上の代表が2011年~2020年に向けた意欲的なターゲットを含めた最新の世界植物保全戦略の採択を支持する発言をした。
トラフィックの薬用植物プログラムリーダーのアナスタシア・ティモシャイナは、生物多様性条約の第2作業部会において、トラフィックとWWFを代表して発言し、野生の植物資源を社会的・生態的に持続可能な形で利用するためのフェアワイルド基準(www.fairwild.org)やGlobal Forest and Trade Network (GFTN, http://gftn.panda.org/)によって設立された、合法的で責任のある木材の調達のためのガイドラインといった2つのガイドラインをGSPC ツールキットに盛り込むよう提案した。
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また、「トラフィックおよびWWFは、政府や企業やその他の関係者らが持続可能で倫理的に野生から植物を調達するのを証明できる原則・基準といった一式が一通り備わっているフェアワイルドやGFTNガイドラインを利用することを薦める」とアナスタシアはさらに強調した。
またCBD-COP10が開始して一週間は、各国代表やその他の参加者、メディアに向けて野生の薬用・アロマティック植物の価値やその重要性について関心を高め、フェアワイルド基準への理解・利用を促すため、トラフィックは3つのイベントを開催した。3つの大陸よりそれぞれの地域で伝統薬を処方している賢人を招き、先住民族や現地のコミュニティの暮らしや医療や、それぞれの国で、それぞれの薬局方に使われる野生の薬用・アロマティック植物を持続可能な形で利用する利点について紹介した。
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これらイベントは日本経団連自然保護基金のご支援により開催できました。イベントでは、揚子江上流域での南五味子(ナンゴミシSchisandra sphenanthera)や冬虫夏草(フユクサナツムシタケCordyceps sinensis)という2つの薬に利用されている種の採集や取引の経済的側面についての調査について、トラフィックの刘雪雁(シュイエン・リュウ)が紹介した。(このプロジェクトに関して詳しくはこちらの小冊子(英語)、PDF、300 KB)
ブラジル、アクレ州から先住民であるヤワナワ族のチーフ、タシュカ・ヤワナワ氏や、ケニア中央部のムコゴドの森から来た先住民イヤク族のリーダーであるアンドリュー・ナイネネ・レレコイティエン氏の両氏は伝統療養師として、ブラジルやケニアの農村部において薬用植物がいかに地域の人々の暮らしや健康管理に貢献しているか話をしてくれた。
四川省中医薬科学院副理事である張毅教授は、植物をみつけ、採取し、加工するにあたっての伝統的な知識について話をしてくれた。最後にはトラフィックが話をし、これらの各地域での事例が野生植物の保護の世界規模での問題やCBDの議題につながっていることを述べた。
トラフィックは、政府や地域社会や民間分野において、持続可能で公平な野生の薬用植物資源の採取・取引を確保するために大きな可能性のある手段としてフェアワイルド基準を紹介してきた。
また、CBDにおいて先週初め、トラフィックは沈香の世界的な取引に関するふたつのレポートを発表した。沈香は、アジアに生育するアクイラリア属Aqulaliaの木からとれるが、この樹種は中東や日本、台湾での高い需要を満たすために過剰に採取され脅かされている。
CBD-COP10の議論は今週も続いている。
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